著しい高齢化社会の中にあって、私は循環器内科の医師として、これまでに大勢の心臓疾患の患者様の診療に携わって参りました。
心臓の病気と言えば、ある日突然に胸が苦しくなって倒れてしまう、そのようなイメージを持たれる方が多いと思います。急性心筋梗塞がその代表的な疾患であり、患者様の命を救うためには一刻一秒を争って心臓カテーテル手術を開始する必要があります。いつ心臓が止まってしまうかも分からない危機的な状況の中で、迅速かつ適切な判断、そして丁寧な処置を間断なく繰り返しながら、ミスなく治療を完遂することは、あらゆる緊急医療の中でも特に高い難易度を有するものです。私はこの心臓カテーテル手術を、術者としてチームの先頭に立ってこれまでに数多行って参りました。そのために積んだ修練は、私の医師としての根幹をなすものです。
一方、同じ心臓の病気でも、心不全は大きく異なる顔を持ちます。だんだんと病状が悪化することが多く、患者様やその御家族を長期間にわたって肉体的にも精神的にも苦しめてしまうのが特徴です。そのため、ただ疾患だけに着目して治療を行えば良いということはなく、日々の診療の中でコミュニケーションを重ねることで患者様や御家族の生き方や人生観に触れ、患者様の生きがいを見出しつつ、御家族の生活にも寄り添った医療を提供することが、その本当の幸福のためにどれほど大切であるか、ということを痛感して参りました。
私は、この文京区本郷の地で幼少期から長年を過ごして参りました。愛着のある場所で、地域の皆様の生活と人生を医療の面から支えて参りたいと思い立ち、このたびの開業を決心した次第です。医師としてのこれまでの経験を活かして全力を尽くして参りますので、皆様のご支援を、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
医師・医学博士村岡 洋典 (むらおか ひろのり)