循環器内科で診る疾患
Cardiology Diseases
循環器内科で診る疾患
Cardiology Diseases
当院では、心電図、エコー検査(心臓、腹部、下肢静脈)、血圧・脈波検査(血管年齢)、24時間心電図(ホルター心電図)、レントゲン検査(胸部、腹部)、院内迅速検査(BNP、Dダイマー、血球数測定、臓器機能、尿検査、糖尿病)等の各種検査機器を備えています。
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や不整脈、心臓弁膜症、心不全、深部静脈血栓症・肺塞栓症、閉塞性動脈硬化症、急性大動脈解離など、幅広い疾患の診断・治療を行います。健康診断で心雑音や心電図異常を指摘された方も、ご相談ください。
また、冠動脈ステント治療後、冠動脈バイパス術後、カテーテルアブレーション後、人工弁置換術後、弁形成術後、人工血管置換術後・ステントグラフト内挿術後など、各種心臓血管の術後患者様についても、外来フォロー対応が可能です。
心筋に血液を供給する冠動脈が閉塞し、心筋が壊死に陥る病態です。極めて危険な疾患であり、発症した瞬間に4分の1の方が致死性不整脈によってその場で生命を落としてしまいます。運良く病院に運ばれて、適切な治療を受けることが出来たとしても、不整脈や心不全(ポンプ失調)、心破裂などの合併症を生じることで、1割弱の方が不幸な経過をたどります。
急性心筋梗塞では、冠動脈が閉塞してからおよそ3時間で大部分の心筋が壊死に陥ることが分かっています。心筋には再生能力がないため、冠動脈の血流を回復させるための処置(緊急カテーテル検査・治療)を、迅速かつ的確に実施することが極めて重要です。そのために患者さんが取るべき行動は、「10分以上続く突然の胸痛を自覚したら、とにかく119番通報」です。救急隊は、緊急カテーテル検査・治療を実施可能な近隣の病院の情報を常に把握していますから、対応をお願いしてしまうのが最も合理的です。「大したことがなかったら恥ずかしい」、「救急車のサイレンが近所迷惑になる」などと考える必要はありません。
急性心筋梗塞は、典型的な胸痛症状や心電図変化のみで比較的容易に診断できる場合が多いですが、心エコーや、心筋トロポニンTなどの採血検査を行うことで、診断の精度を高めることが出来ます。これらの検査(心電図、心エコー、心筋トロポニンTの採血)は、当院でも迅速に実施できる体制を整えております。当院にて急性心筋梗塞と診断した患者さんに対しては、初期治療と救急車の手配を行った上で、速やかに近隣の高次医療機関にご紹介します。
心臓は肺と全身に血液を送り出す筋肉でできたポンプであり、冠動脈と呼ばれる血管から血液(酸素・栄養)の供給を受けることで、絶え間なく動き続けています。この冠動脈が動脈硬化の影響を受けて狭窄すると、心臓の筋肉(心筋)に十分な血液が供給されない状態となり、狭心症を発症します。典型的には、「朝に家を出て寒い風に当たりながら歩いていると、胸が苦しくなって、5分ほど休むと良くなることを繰り返す」といった症状を訴える方が多いです。
この症状は、体を動かすなどして心臓への負担が増えたときなどに、心筋への血流が相対的に不足し、酸欠状態に陥ることが原因で生じます。立ち止まってしばらく休むと、心臓への負担が和らぐために症状が治まります。なお、糖尿病を合併している患者さんや、ご高齢の方や女性の場合、息切れ程度の症状しか自覚せず、はっきりとした胸部症状を感じない方もいるので注意が必要です。
狭心症の診断のためには、まず外来で運動負荷心電図検査、冠動脈CT・MRI検査などを行います。ホルター心電図(24時間心電図)や、血管拡張薬(ニトログリセリン)の効果を確認することも有用です。これらの検査で狭心症の疑いが強まれば、入院の上で冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)を行います。
狭心症の治療は、① 胸部症状を和らげる薬剤を用いたり、② 狭窄した部分をバルーンやステント(網目状の金属の筒)で広げるカテーテル手術、および③ 狭窄した部分より先に別の血管をつなげる手術(冠動脈バイパス手術)、などがあります。患者さんの状態や冠動脈造影検査の結果を踏まえ、患者さんと相談しながら治療法を決定します。
狭くなった冠動脈を広げる治療はあくまでも対処療法であり、既に進んでしまった動脈硬化そのものを元に戻す方法はありません。動脈硬化の進行を少しでも遅らせるためには、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの各生活習慣病に対する治療を根気よく続け、確実に禁煙することが重要です。
心臓は、全身と肺に血液を送るための筋肉でできたポンプであり、平均的な体格の健康成人が安静にしているときには、1分間あたり5~6Lの血液を送り出しています。心臓は非常に予備力に優れた臓器であり、激しい運動の際には1分間あたり20Lもの血液を全身に供給することができます。
このような心臓の能力は、様々な疾患や加齢によって徐々に損なわれていきます。能力の低下が中等度までであれば、予備力が低下する程度に留まるため、日常生活を送る上で重大な支障が生じることはあまりありません。しかし、それ以上に心臓の機能が損なわれた状態になると、血流のうっ滞によって体液量が増加し、胸水や肺うっ血による呼吸困難や、下肢浮腫などの心不全症状が出現します。さらに状態が悪化すれば、全身の諸臓器が必要としている血液を十分に供給できなくなり、臓器機能が悪化します。これを低心拍出量症候群と言います。
心不全は、急激に状態が悪化する急性期(急性心不全)と、比較的安定した状態で推移する慢性期(慢性心不全)に大きく分類することができます。
急性心不全の病状は得てして深刻であり、基本的には入院が必要です。適切な治療によって一旦は改善することが殆どですが、残念ながら心不全そのものが完治することはなく、ぶり返すことがあります。また、過労や、水分・塩分の摂りすぎ、風邪、ストレス、薬の飲み忘れなどにより、心不全の症状が悪化したり、再発することもあります。その場合も、適切な治療により再度心不全は改善しますが、このような悪化と改善を繰り返すことにより、心不全はだんだん悪くなり、やがて生命を脅かします。
(日本循環器学会 急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改定版より引用)
一方、慢性心不全の状態にある患者様については、できる限り安定した状態を維持できるように、外来にて採血や心電図、レントゲン、心エコーなどの検査を定期的に実施し、内服薬の調整等を行いながら経過を観察します。この時期に心臓の機能をさらに悪くしないためには、適切な薬物治療に加えて、禁煙や減塩、節酒、適度な運動が重要です。急性心不全をぶり返さないためには、以上の事項に加えて、過労や水分の過剰摂取を避け、風邪の予防に努めることが大切です。
当院では、病院やクリニックへの定期的な通院が困難な慢性心不全の患者様を対象として、在宅訪問診療も行っております。詳しくは在宅訪問診療のページを御覧下さい。
心臓は左右の心房(サブポンプ)と心室(メインポンプ)の4つの部屋から構成され、心房 → 心室の順に規則正しく、1分間に約70回の収縮と拡張を繰り返すことで、全身と肺に絶え間なく血液を供給し続けています。心房細動になると、サブポンプである心房の収縮活動に異常が生じ、1分間に300回程度、無秩序に細かく震えてしまう状態となります。初めのうちは発作性に出現し、数秒~数日で停止しますが、病態が進行すると次第に持続時間や頻度が増し、持続性、永続性となっていきます。
心房細動は、心臓弁膜症や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、高血圧症などが原因となって発症することもありますが、特に原因がない方も珍しくありません。高齢になるほど発症しやすくなることが分かっており、心臓の老化現象の一種と言えるかもしれません。診断は、心電図検査、ホルター心電図検査などによって行います。
心房細動によってメインポンプである心室まで止まってしまうようなことはまずありませんが、脈が不規則になり、多くの場合は頻脈になります。強い動悸感により、発作のたびに救急車のお世話にならざるを得ない患者さんもいらっしゃいます。また、心房細動はしばしば心不全や脳梗塞などの合併症を生じることがあり、これは健康や寿命に影響する最大の問題点となります。心房細動の治療の目的は、苦痛を伴う動悸症状を緩和し、合併症を最大限予防することにあります。
心房細動の治療には、様々な種類の薬物や、電気的除細動、カテーテルアブレーションなど、多くの武器が用意されています。患者さんごとに、病気の進行段階や、動悸や心不全症状の有無、脳梗塞の発症リスク、ご年齢や全身状態、ご希望などを踏まえつつ、最適な治療戦略を立てることが重要です。