突然死が心配な方へ
突然死が心配な方へ
ニュースで、若い著名人の心臓突然死などの痛ましい話題に触れ、「自分も突然倒れてしまうのでは?」と不安になったことはありませんか? 心臓は生命維持に直結する臓器であるため、不安になるのは当たり前のことです。しかし、実は心臓突然死の原因となる病気は限られており、健康診断を定期的に受けている低リスクの方が、ある日突然命を落とす確率は極めて低いのが現実です。ここでは、心臓突然死の年齢ごとのリスク、「心配しすぎなくてよい理由」、そして原因となる代表的な病気について解説します。
心臓突然死のリスクは、年齢によって原因も確率も全く異なります。過度の楽観は禁物ですが、過剰に恐れる必要もありません。
この年代での突然死は、ゼロではないものの非常に稀です。もし起こるとすれば「遺伝性の不整脈」や「生まれつきの心筋症」が原因の大部分を占めます。このほか、「川崎病後遺症」や「先天性心疾患」、「家族性高コレステロール血症(ホモ接合型)」なども原因として重要ですが、頻度は低いです。
遺伝性の不整脈や心筋症は、学校や職場の健康診断の「心電図」で異常として引っかかることがほとんどです。これまでの健診で心電図異常を指摘されたことがなく、危険な失神を経験したこともなく、血縁者に若くして突然死してしまった方も居なければ、過度に心配する必要はありません。
男性は、この年代から「急性心筋梗塞」による突然死のリスクが増加し始めます。女性は女性ホルモンに守られており、まだ心筋梗塞のリスクは低いです。
心筋梗塞は、何もないところから突然起こるわけではありません。長年の「高血圧」「脂質異常症(LDLコレステロール高値)」「糖尿病」「喫煙」という動脈硬化の要因が潜んでいることが普通です。毎年の健診でこれらの数値が正常に保たれており、タバコを吸わない方であれば、突然心筋梗塞を起こすリスクは比較的低くなります。
動脈硬化の蓄積による心筋梗塞に加え、加齢に伴う大動脈弁狭窄症などによる、致死性不整脈のリスクが高まります。女性も閉経により心筋梗塞のリスクが男性に追いつきます。
血圧やコレステロール等の管理に加え、ご不安な症状があれば、当院にて「心臓超音波検査(心エコー)や「ホルター心電図」などの精密検査を受けることをお勧めします。検査で異常があれば、速やかに適切な治療につなげることができますし、正常であれば強いご不安を解消することにつながります。
以下のいずれかに当てはまる場合は、心臓突然死のリスクがわずかならず高い状況かもしれません。年齢に関わらず早めの受診・相談をお勧めします。
前触れ(冷や汗や気分の悪さ)が全くなく、突然バタンと倒れた
走っている最中など、運動中に気を失った
座っている時や、仰向けに寝ている時に気を失った
気を失っている間に、けいれんを起こしていた
50歳未満で突然死された血縁の家族がいる
階段や坂道を登った時に、胸が締め付けられる、喉や奥歯が浮くような違和感が出る(休むと消える)
「喫煙」に加えて、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」のうち複数を治療せずに放置している
以前は平気だった距離の歩行や階段で、すぐに息が切れて立ち止まってしまう
足の甲や脛を指で押すと跡が残るようなむくみがある、夜に横になると咳が出たり息苦しくなったりする
脈がバラバラに飛ぶ、発作的に脈が早くなることがある
心臓突然死の多くは、心室細動という、心臓が痙攣して血液を送り出せなくなる致死性不整脈によって引き起こされます。心室細動の引き金となる病気には、主に以下の4つがあります。
心臓の筋肉に栄養を送る血管(冠動脈)が、動脈硬化によって突然詰まる病気です。心臓の筋肉が極端な酸欠状態や壊死に陥ることにより、心室細動が引き起こされます。長年の高血圧、悪玉コレステロールの高値、糖尿病、喫煙などによって血管内に「プラーク」が形成され、それが突然破綻する(破ける)ことが原因となります。日々の生活習慣病のコントロールが最大の予防となります。なお、男性は40代からリスクが上昇しますが、女性は女性ホルモン(エストロゲン)の血管保護作用により、閉経前の発症は稀です。しかし、女性も閉経後(60代以降)は男性と同等にリスクが急増します。また、女性の心筋梗塞は「胸の痛み」ではなく「吐き気」や「背中の痛み」など非典型的な症状が出やすい点にも注意が必要です。
心臓の機能や形には異常がないのに、心臓内の電気信号を伝えるシステム(刺激伝導系)に遺伝的な異常があり、若くして突然死を起こしてしまう疾患です。原因不明の失神を繰り返している方や、ご家族に若くして突然死された方がいる場合などには、特に注意が必要です。症状がない時でも特徴的な心電図所見を呈するため、健康診断の心電図で発見されることもあります。ブルガダ症候群は圧倒的に男性に多く、その不整脈発作は「夜間の睡眠中やリラックスしているとき」や「発熱しているとき」に起こりやすいという特徴があります。一方、QT延長症候群はやや女性に多い傾向があり、「運動中や、大きな音などで強く驚いた時など」が不整脈発作の誘引となります。
心臓の筋肉(心筋)そのものに異常が生じる病気です。肥大型心筋症は、筋肉が異常に分厚くなりすぎて柔軟性が失われ、不整脈が出やすくなる病気で、しばしば若いスポーツ選手の突然死の原因となることもあります。一方、拡張型心筋症は筋肉が薄く伸びきってしまい、血液を送り出すポンプの力が極端に落ちてしまう病気です。これらは、心臓超音波検査(心エコー)を行うことで、正確に筋肉の厚みや動きを確認できます。
心臓の内部には、血液を一方通行に流すための逆流防止弁が4つ備わっています。このうち、心臓の出口にある大動脈弁と呼ばれる弁は、加齢とともに石灰化してカチカチに硬くなり、開きにくくなることがあります。これを「大動脈弁狭窄症」と言います。大動脈弁狭窄症が重症化すると、脳や全身に十分な血液を送り出せなくなり、「体を動かしたときの胸の痛みや息切れ」や、「失神」といった症状が現れます。このような状態では、心臓突然死の危険が高くなります。多くの心臓弁膜症は、聴診によって比較的簡単に診断できます。