糖尿病診療
Diabetes Mellitus
糖尿病診療
Diabetes Mellitus
2型糖尿病は、膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン(インスリン)の分泌量が低下したり、インスリンが体に作用しにくい状態(インスリン抵抗性)になることで、血糖値が上昇する疾患です。糖尿病になりやすい体質がベースにあって、そこに過食や運動不足、加齢などの原因が加わることで発症します。遺伝的因子の関与は大きく、往々にして患者さんの血縁のご家族にも糖尿病の方がいらっしゃいます。診断は、採血でHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と呼ばれる糖尿病の指標値や血糖値を測定することによって行いますが、正確な診断のために、75g経口ブドウ糖負荷試験を行うこともあります。
2型糖尿病の病初期には殆ど自覚症状がありませんが、血液中の過剰な糖分は長い年月を掛けて全身を蝕み、様々な合併症を引き起こします。細い血管が障害を受けると、網膜症や腎症、神経障害といった「三大合併症」を生じ、最終的に失明や透析を要する末期腎不全などに至ります。また、太い血管の動脈硬化を促進することにより、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などが起こりやすくなります。さらに、足の神経や血管のダメージによって糖尿病性足病変をきたすと、足の切断を余儀なくされることもあります。これら合併症のリスクをできるだけ低減させるためには、適切な糖尿病治療を継続することが重要です。
糖尿病の治療は、患者さんの状態に応じて血糖値やHbA1cの目標値を設定し、それに向けて食事・運動療法や内服薬、GLP-1受容体作動薬(マンジャロ®などの注射薬)、インスリン注射(当院では未対応)などを組み合わせて行います。内服薬には、インスリン分泌を促す薬剤、糖代謝を改善する薬剤、尿での糖排泄を促進する薬剤、腸管における糖吸収を抑制する薬剤など、様々な種類があり、患者さんの病態ごとに組み合わせながら使用します。かつて、糖尿病治療で用いられる薬剤は低血糖などの重篤な副作用を生じることが多く、また、患者さんにも多大なる生活習慣改善の努力が欠かせないものでしたが、近年では比較的リスクが低く、効果に優れた薬剤が相次いで誕生することによって、治療による患者さんの負担は大きく軽減されつつあります。また最近では、腕などに小さなセンサーを装着して10日~2週間にわたって連続して血糖値を測定できる持続血糖測定器(CGM)が登場しました。これにより、さらに正確かつ洗練された糖尿病治療に取り組むことが可能となっています。
CGM外来は2025年6月1日より開始予定です
この度、当院では最新の医療機器である持続血糖測定器(CGM)の外来を開設いたしました。CGMは、腕などに小さなセンサーを装着することで、約10日間連続して間質液中のグルコース値を自動的かつ連続して測定し、血糖値の変動を詳細に「見える化」することができる、画期的なシステムです。測定されたデータは、お手持ちのスマートフォンにインストールした専用アプリに無線で自動的に送信され、リアルタイムの血糖値や、血糖推移のグラフなどを確認することができます。
当院では、CGMシステムとしてDexcom社の「G7」を提供しております。同様の製品にはアボット社の「FreeStyle(フリースタイル) リブレ2」や、メドトロニック社の「ガーディアン4スマートCGMシステム」などがあります。Dexcom G7は各種のCGMの中でも、高精度である(誤差率が低い)ことが報告されています。
なお、当院のCGM外来はすべて「自費」扱いとなります。保険診療を用いたCGMの装着は、インスリン投与中の方のみが対象であり、当院では対応しておりませんのでご了承ください。
Dexcom G7 CGM システム 製品概要
装着後、10日間にわたり血糖値を連続して測定できます。これにより、健康診断や診察時の採血だけでは捉えきれない、食後の急激な血糖上昇(食後高血糖、いわゆる「血糖スパイク」)や、夜間・早朝の無自覚な低血糖、あるいは高血糖など、これまで見過ごされがちだった血糖変動のパターンを明らかにします。
食事の内容やタイミング、運動の種類や強度、睡眠の質、ストレスなどが血糖値にどのように影響しているかを具体的に把握できます。これにより、ご自身の生活に合わせた、より効果的な血糖コントロール策を見つける手助けとなります。
食事・運動療法や糖尿病治療薬の効果が適切であるかなどを、連続的なデータに基づいて客観的に評価し、治療法の最適化に繋げます。
Dexcom G7 装着イメージ
糖尿病の治療中で、食事・運動療法や薬の効果を詳細に評価したい方
健康診断等で糖尿病予備群(境界型)と指摘され、本格的な糖尿病への進行を予防したい方
ご自身の健康管理の一環として、血糖変動のパターンを詳しく知りたい方、など
Dexcom G7 スマートフォンアプリ
※ 当院にてCGMの装着を希望される方は、あらかじめインストールとアカウントの作成をお願いいたします。
当院で糖尿病や糖尿病疑い(糖尿病予備軍)として受診中・受診予定の方と、健康管理の一環としてCGMを実施する場合とで、料金が異なります。なお、当院のCGM外来はすべて「自費」扱いとなります。保険診療を用いたCGMの装着は、インスリン投与中の方のみが対象であり、当院では対応しておりませんのでご了承ください。
糖尿病や糖尿病疑いなどで保険診療を受けているものの、CGMが保険診療の対象とならない患者さん(インスリンを使用していない方)が対象となります。法律で認められた選定療養の仕組みに則り、通常の保険診療の枠組みに追加して、自費でCGMを装着することができます。いわゆる「混合診療」には該当しません。
定期的な診察の際に、CGMを希望されている旨を医師にお伝え下さい。
CGM本体、および装着費用 | 8,800円(税込み) |
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診察とCGM装着はすべて自費になります。
初診日に説明とCGMの装着を行い、約10日後に結果説明の再診を行います。
受診をご希望の場合、通常の初診としてご予約ください。
CGM本体とその装着費用、 および2回の診察費を含みます |
11,000円(税込み) |
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糖尿病の診断や評価において重要な検査のひとつに、75g OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)があります。この検査は、体がどのようにブドウ糖を処理するかを評価するために行われます。特に、糖尿病や境界型糖尿病(糖尿病予備群)を確認するために用いられます。
75g OGTTは、糖尿病の早期発見や予防に重要な役割を果たします。糖尿病は初期段階では無症状で進行することが多く、症状が現れたときには既に進行していることが少なくありません。この検査により、血糖値の異常を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能となります。
75g OGTTは、糖尿病の診断や境界型糖尿病の評価において非常に有用な検査です。この検査を受けることで、糖質摂取に対するご自身の反応を把握し、早期の対応が可能になります。糖尿病のリスクがある方や、血糖値の異常を指摘された方は、ぜひ当院でこの検査を受けてみてください。健康な生活を維持するための重要な一歩となります。
近年、新たな作用機序を持つ糖尿病の治療薬が次々と登場しており、治療選択肢が広がっています。中でも、週1回投与の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ®」(一般名:チルゼパチド)は、優れた血糖改善効果と体重減少効果が期待される薬剤です。当院では、このマンジャロ®を用いた保険診療による糖尿病治療を行っています(ダイエットを目的とした自費診療は行っておりません)
マンジャロ®は、GIPとGLP-1という2つの消化管ホルモンの作用を併せ持つ、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIP/GLP-1は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の分泌を促すとともに、血糖値を下げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑えることで、血糖値を下げる働きがあります。週1回の皮下注射で、従来薬と比較して強力な血糖改善効果が期待できます。
専用の簡便な注入器で、週に1回、同じ曜日にご自身で皮下注射して頂きます。投与部位は腹部、太もも、上腕部などです。自己注射の手技については、当院スタッフから十分な指導を受けてください。
主な副作用は、吐き気、下痢、便秘などの消化器症状ですが、時間の経過とともに軽くなることが一般的です。低血糖のリスクは比較的低いものの、他の糖尿病薬と併用する場合は注意が必要です。また、まれに急性膵炎が報告されているため、持続的な強い腹痛や嘔吐などの症状があれば、直ちに受診してください。