睡眠時無呼吸症候群
Sleep apnea syndrome
睡眠時無呼吸症候群
Sleep apnea syndrome
「いびきがうるさいと言われる」、「夜中に何度も目が覚める」、「日中、耐えられないほどの眠気がある」。これらの症状は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)の代表的なサインです。SASは、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。この状態が続くと、深い睡眠がとれずに日中の活動に支障をきたすだけでなく、高血圧や心臓病、脳卒中といった命に関わる疾患のリスクを高めることが分かっています。
SASは、その原因によって主に2つのタイプに分けられます。
空気の通り道である上気道(喉や鼻)が、睡眠中に物理的に狭くなるか、完全に塞がってしまうことで起こります。SASの患者さんの9割以上がこのタイプです。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
特に、お子様のSASでは、大人のように肥満が原因であることは少なく、扁桃肥大やアデノイドが主な原因となります。いびきだけでなく、口呼吸や寝相の悪さ、おねしょなどもサインの一つです。お子様のSASがご心配であれば、まずは耳鼻咽喉科にてご相談頂くことをおすすめ致します。
脳の呼吸中枢(呼吸をコントロールする司令塔)からの呼吸命令が、一時的に出なくなることで起こるタイプです。心臓の病気や脳の病気に伴って現れることが多く、専門的な検査と治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断と治療方針の決定には、睡眠中の呼吸状態を客観的に評価する検査が不可欠です。当院では、患者さんの状態やご希望に合わせて、ご自宅で手軽に行える簡易検査と、必要に応じて入院して行う精密検査をご案内・ご紹介をしています。
診断の重要な指標となるのが「AHI(無呼吸低呼吸指数)」です。これは、睡眠1時間あたりに呼吸が10秒以上止まる「無呼吸」と、呼吸が浅くなる「低呼吸」が合計何回起こったかを示す数値です。SASの重症度は、このAHIの値によって以下のように分類されます。
AHIが5回以上で、いびきや日中の眠気などの症状を伴う場合にSASと診断されます。特にAHIが20回を超えると(簡易検査の場合は40回を超えると)、CPAP療法などの積極的な治療が考慮・推奨されます。
当院でお申込みいただき、ご自宅で簡単に行える、SASのスクリーニング検査です。寝る前に、手の指や鼻、胸に小さなセンサーを取り付けて、いつも通りにお休みいただきます。操作は簡単で、普段の睡眠環境に近い状態で検査できるため、多くの方にとってまずはじめにお勧めする検査です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療目標は、睡眠中の無呼吸をなくし、睡眠の質を向上させることで、日中の眠気や倦怠感を解消し、将来起こりうる生活習慣病を予防することです。治療法は、重症度や原因、患者さんのライフスタイルに応じて選択します。
全ての重症度の患者さんにとって基本となる治療です。
軽症から中等症の患者さんに有効な治療法です。睡眠中に専用のマウスピースを装着することで、下顎を少し前方に突き出させ、舌の付け根が沈み込むのを防いで気道を広げます。持ち運びが便利で、旅行や出張の際にも使用しやすいのがメリットです。作製にあたっては、専門の歯科医師との連携が必要となります。
鼻から柔らかいチューブを挿入し、物理的に気道を確保する方法です。手軽に使用できますが、CPAPほどの確実な効果はなく、異物感を感じる方もいます。CPAPがどうしても合わない場合や、旅行時の一時的な使用などに検討されることがあります。
中等症から重症の患者さんにとって、最も標準的で効果の高い治療法です。鼻に装着したマスクから、一定の圧力をかけた空気を送り込み、その風圧で気道が塞がるのを防ぎます。AHI(無呼吸低呼吸指数)が20回以上の場合(簡易検査の場合は40回以上の場合)、健康保険の適用となります。
CPAPを使用することで、多くの方が治療を始めたその日から、いびきの消失や熟睡感を実感されます。合併症のリスクを減らすためにも、毎晩継続して使用することが何よりも大切です。当院では、患者さんが快適に治療を続けられるよう、定期的なフォローアップとサポートを行っています。
このほか、お子様や扁桃肥大が明らかな成人の方には、外科手術(口蓋扁桃摘出術など)が根本的な治療となる場合もあります。お困りの症状を適切に評価し、適切な治療法をご提案しますので、どうぞご相談ください。