健診で「異常Q波」と指摘されたら
健診で「異常Q波」と指摘されたら
健康診断や心電図検査で「異常Q波」を指摘された方へ、循環器専門医が解説します。
健康診断の心電図判定で、「異常Q波(いじょうキューは)」あるいは「陳旧性(ちんきゅうせい)心筋梗塞の疑い」と記載される項目です。心電図の波形の最初の部分(Q波)が、通常よりも深く、幅広くなっている状態を指します。この波形が意味することは、医学的には「心臓の筋肉の一部が電気を通さなくなっている(壊死している)」という可能性です。つまり、過去に「心筋梗塞」を起こし、その部分が傷跡(瘢痕)になって残っていることを示唆するサインであるため、検診項目の中でも特に慎重な対応が求められます。
「胸が痛くなったことは一度もないので、心筋梗塞とは思わなかった」と驚かれる患者さんも多いのですが、実は心筋梗塞には、強烈な痛みを伴わない「無症候性心筋梗塞(隠れ心筋梗塞)」が存在します。特に糖尿病をお持ちの方やご高齢の方では、発作時の痛みを「ただの胃痛」や「胸焼け」と勘違いしてやり過ごしてしまい、検診で初めて「傷跡」が見つかるというケースが少なからずあるのです。
ただし、異常Q波があるからといって、全ての方が心筋梗塞というわけではありません。心筋梗塞以外にも、「肥大型心筋症」などの心臓の筋肉の病気でこの波形が出ることがありますし、さらに多いのが、心臓の位置や傾きによる影響です。心臓が横に寝ていたり、少し回転していたりするだけで、病気がない健康な方でも異常Q波として記録されてしまうことがよくあります。健康な方の異常Q波については、全く心配はいりません。
したがって、この判定が出た場合に最も重要なのは、「本当に心筋梗塞の傷跡があるのか、それともただの心臓の傾きなのか」をはっきりさせることです。そのために不可欠なのが、当院で行う「心臓超音波検査(心エコー)」です。エコーで心臓を観察し、壁の動きが悪くなっている部分(動かない傷跡)があれば「陳旧性心筋梗塞」と確定診断されますし、全ての壁が元気に動いていれば「所見なし(異常なし)」と判断できます。
もし、「隠れ心筋梗塞」であった場合は、二度目の発作を防ぐための精査や治療が直ちに必要となるため、速やかに高次医療機関にご紹介します。「症状がないから大丈夫」と放置するのが最も危険です。ご自身の心臓の状態を確かめるために、必ず一度は精密検査を受けてください。
当院の受診の流れ
初回の診察 — 状態の確認と検査の計画
問診・診察のうえ、必要に応じて採血・心電図・胸部レントゲンなどの基本的な検査をその場で行い、状態を確認します。緊急性が疑われる場合は、直ちに近隣の高次医療機関へご紹介します。さらに検査の追加が必要な場合は、ホルター心電図(携帯型の心電計)をお持ち帰りいただいたり、冠動脈CT検査(連携医療機関で実施)などの予約を行います。
2回目の受診 — 心エコーと結果のご説明
後日、心臓超音波検査(心エコー・予約制)を実施します。ホルター心電図やCTなどすべての検査結果が揃ったこの日に、結果を丁寧にご説明し、今後の方針を一緒に決めていきます。
当院ではセカンドオピニオン診療を行っておりません。すでに他の医療機関にて治療中の心疾患について、当院での相談を希望される際には必ず紹介状をお持ち頂きますよう、お願い致します。かかりつけの先生からの紹介状を持たず受診をされると、過去の経緯や検査結果などがまったくわからないところから手探りの診察となるため、当院にて正確な診断・治療を行うことは、却って困難になります。また、検査や治療が重複することにより、金銭面のみならず、患者様の身体面でも大きな負担が生じます。さらに健康保険側では、医療費の適正化の取り組みとして重複受診を行っている方の調査を行っており、患者様に個別に連絡が入るケースがあります。ご理解、ご協力のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
その他の検診異常については心臓の病気と検診異常のページをご覧ください。