健診で「左室高電位(左室肥大)」と指摘されたら
健診で「左室高電位(左室肥大)」と指摘されたら
健康診断や心電図検査で「左室高電位(左室肥大)」を指摘された方へ、循環器専門医が解説します。
健康診断の心電図判定で、「左室高電位(さしつこうでんい)」あるいは「左室肥大(疑い)」と記載される項目です。心電図の波の振幅が、基準よりも高くなっている状態を指します。この言葉は、「心臓の筋肉から出ている電気信号が強い」ということを意味しています。その理由は大きく分けて二つあり、「① 実際に心臓の筋肉が分厚くなっている(左室肥大)」場合と、「② 筋肉は正常だが、痩せていて心臓と皮膚の距離が近いために強く記録されている(正常亜型)」場合のどちらかです。
検診で指摘される方の多く、特に若い方や痩せ型の方の大部分は、後者の「② 正常亜型」です。胸の壁(皮下脂肪や筋肉)が薄いため、心臓の電気信号があまり減衰せずにダイレクトに電極に伝わり、見かけ上、波形が大きく記録されているだけです。心電図波形の正常範囲は欧米人を基準にして設定されていますので、比較的スレンダーな方が多い日本人では頻度が多い所見となります。この場合は、あくまで体型による特徴ですので、心臓そのものは健康であり、治療の必要は全くありません。
一方で、注意が必要なのは前者の「① 左室肥大」です。これは、長年の高血圧などが原因で、心臓が全身に血液を送るために無理をして働き続けた結果、腕の筋肉が筋トレで太くなるのと同じように、心臓の壁が分厚くなってしまった状態です。「筋肉がつくなら良いことでは?」と思われるかもしれませんが、心臓の場合は逆です。壁が分厚くなりすぎると、心臓のしなやかさが失われて硬くなり、広がりにくくなるため、将来的に「心不全」を引き起こす原因となります。
重要なのは、心電図検査だけでは、この二つ(ただの体型なのか、病的な肥大なのか)を完全に見分けることはできないという点です。そのため、検診で指摘された場合は、一度は当院で「心臓超音波検査(心エコー)」を受けることを是非お勧めします。エコー検査を行えば、心臓の壁の厚さをミリ単位で直接測定できるため、本当に肥大があるのかどうかをその場で判断できます。検査の結果、壁が厚くなっていなければ「異常なし」として安心することができます。もし肥大などの異常が見つかった場合は、さらなる精密検査(心臓MRI等)により診断をつけ、投薬治療等を行うことになります。
当院の受診の流れ
初回の診察 — 状態の確認と検査の計画
問診・診察のうえ、必要に応じて採血・心電図・胸部レントゲンなどの基本的な検査をその場で行い、状態を確認します。緊急性が疑われる場合は、直ちに近隣の高次医療機関へご紹介します。さらに検査の追加が必要な場合は、ホルター心電図(携帯型の心電計)をお持ち帰りいただいたり、冠動脈CT検査(連携医療機関で実施)などの予約を行います。
2回目の受診 — 心エコーと結果のご説明
後日、心臓超音波検査(心エコー・予約制)を実施します。ホルター心電図やCTなどすべての検査結果が揃ったこの日に、結果を丁寧にご説明し、今後の方針を一緒に決めていきます。
当院ではセカンドオピニオン診療を行っておりません。すでに他の医療機関にて治療中の心疾患について、当院での相談を希望される際には必ず紹介状をお持ち頂きますよう、お願い致します。かかりつけの先生からの紹介状を持たず受診をされると、過去の経緯や検査結果などがまったくわからないところから手探りの診察となるため、当院にて正確な診断・治療を行うことは、却って困難になります。また、検査や治療が重複することにより、金銭面のみならず、患者様の身体面でも大きな負担が生じます。さらに健康保険側では、医療費の適正化の取り組みとして重複受診を行っている方の調査を行っており、患者様に個別に連絡が入るケースがあります。ご理解、ご協力のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
その他の検診異常については心臓の病気と検診異常のページをご覧ください。