健診で「ST低下」と指摘されたら
健診で「ST低下」と指摘されたら
健康診断や心電図検査で「ST低下」を指摘された方へ、循環器専門医が解説します。
健康診断の心電図判定で、「ST低下(エスティーていか)」あるいは「心筋虚血(しんきんきょけつ)の疑い」と記載される項目です。専門的には、心電図波形の「ST部分」と呼ばれる場所が、基準線よりも下がっている状態を指します。この所見が医学的に示唆するのは、「心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が行き渡っていない(酸欠状態)」という可能性です。そのため、最も警戒すべき病気は、心臓の血管が動脈硬化で狭くなる「狭心症」や、過去に起きた「心筋梗塞」となります。このように、重大な疾患が潜んでいる可能性が高いため、検診判定でも「要精密検査」や「要医療」となることが一般的です。
しかし、ST低下があるからといって、必ずしも狭心症であるとは限りません。実際には、長年の高血圧によって心臓の筋肉が分厚くなっている場合や、単なる自律神経の影響、あるいは薬(ジギタリス等)や電解質のバランスの影響でも、ST部分は下がることがあります。特に、痩せ型の若年女性や閉経後の女性では、心臓に病気がなくてもホルモンバランスの影響等でST低下が見られることが少なくありません(非特異的ST低下)。
重要なのは、この所見が「本当に血管の狭窄によるものなのか」、それとも「それ以外の原因(高血圧や体質)によるものなのか」を見極めることです。判断の最大のポイントは「自覚症状の有無」です。もし、階段を登った時や急いで歩いた時に「胸が締め付けられる」「息切れがする」といった症状がある場合は、狭心症の可能性が極めて高いため、早急に検査と治療が必要です。
一方で、全く症状がない場合でも安心はできません。糖尿病の方やご高齢の方では、痛みを感じない「無症候性心筋虚血(隠れ狭心症)」である可能性があるからです。当院では、心臓超音波検査(心エコー)を行い、心臓の壁の動きに異常がないかを確認します。血流が悪い場所があれば壁の動きが悪くなるため、診断の手がかりになります。また、必要に応じて連携医療機関での冠動脈CT検査などをご案内し、血管の状態を直接確認することをお勧めする場合もあります。「症状がないから」と放置せず、心臓の状態を知る良い機会と捉えて、一度ご相談ください。
当院の受診の流れ
初回の診察 — 状態の確認と検査の計画
問診・診察のうえ、必要に応じて採血・心電図・胸部レントゲンなどの基本的な検査をその場で行い、状態を確認します。緊急性が疑われる場合は、直ちに近隣の高次医療機関へご紹介します。さらに検査の追加が必要な場合は、ホルター心電図(携帯型の心電計)をお持ち帰りいただいたり、冠動脈CT検査(連携医療機関で実施)などの予約を行います。
2回目の受診 — 心エコーと結果のご説明
後日、心臓超音波検査(心エコー・予約制)を実施します。ホルター心電図やCTなどすべての検査結果が揃ったこの日に、結果を丁寧にご説明し、今後の方針を一緒に決めていきます。
当院ではセカンドオピニオン診療を行っておりません。すでに他の医療機関にて治療中の心疾患について、当院での相談を希望される際には必ず紹介状をお持ち頂きますよう、お願い致します。かかりつけの先生からの紹介状を持たず受診をされると、過去の経緯や検査結果などがまったくわからないところから手探りの診察となるため、当院にて正確な診断・治療を行うことは、却って困難になります。また、検査や治療が重複することにより、金銭面のみならず、患者様の身体面でも大きな負担が生じます。さらに健康保険側では、医療費の適正化の取り組みとして重複受診を行っている方の調査を行っており、患者様に個別に連絡が入るケースがあります。ご理解、ご協力のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
その他の検診異常については心臓の病気と検診異常のページをご覧ください。